車のコーティングとは?
車を新車で購入する際に、多くの人がボディコーティングのディーラーオプションをおすすめされるのではないでしょうか。実際にボディコーティングをすると、洗車の際の手間や洗車傷、塗装の痛みを軽減し、新車時のボディのツヤ・美しさを保ちやすくなることは事実です。
ただ、ボディコーティングの価格・種類も種類が多く、またインターネット上の記事を見るとディーラーのコーティングをおすすめしないという話も多く、どのコーティングを選んで良いか迷われる方も多いと思います。
(記事を書いている人がコーティング系業者の場合は、バイアスがかかっている可能性があるので注意が必要です)
今回の記事では、新車のボディーコーティングの特徴と選び方についてわかりやすく解説をしていきます。
車のコーティングの種類・特徴・金額
車のボディーコーティングといっても、提供事業者がディーラーやガソリンスタンド、キーパーなどの専門店など様々な種類があり、さらにそれぞれの事業者で独自のブランディングでコーティングを提供しています。
まず、基本的なコーティングの種類・特徴・金額感について解説をしていきます。
トヨタモビリティ東京株式会社
はじめに:車の塗装の仕組みについて
新車の塗装について簡単に説明すると、金属の鋼板の錆が発生しないように錆止めなどを塗る『下塗り』を行い、その上に描くボディカラーを実現すためのベース層、最後にベース層を保護するクリア層という3層構造になっています。
(厳密にいうと中塗りや複数のベース層塗装などもありますが、簡便に解説しています)
クリア層は本当に軽微なスクラッチ傷がボディカラーまで届かないようにする、ボディカラーの色褪せを防ぐことを目的としていますが、ウレタン系の素材のため紫外線や鳥のフンなどによる劣化が起きやすいというデメリットがあります。
ディーラーやガソリンスタンド・専門店などでガラスコーティングがおすすめされる理由は、クリア層では防ぎきれないボディ塗装の劣化を抑えることが理由となっています。
コーティングの種類・特徴・金額感
ボディコーティングについては大きく『①油脂系コーティング(ワックス)』、『②ポリマーコーティング』、『③ガラスコーティング』3つの種類があります。それぞれ特徴・効果が持続する期間、金額について差がありますので、わかりやすく解説していきます。
コーティングの種類 | 特徴 | 持続期間 | 金額 |
---|---|---|---|
①油脂コーティング | ・パラフィンやカルナバなどの油脂を塗ることで、ボディの撥水や艶を実現 ・油脂が紫外線などによる色褪せから防いでくれる ・何度も塗り直しをしなければならない | 1〜2週間 | ・数百円〜5,000円程度 |
②ポリマーコーティング | ・フライパンなどでお馴染みのフッ素などのコーティング素材で、ワックスよりも効果が持続しやすい ・コーティング素材の施工性が高く、個人でもコーティングしやすい ・柔らかいコーティングのため、皮膜が落ちやすい | 1〜3ヶ月 | ・5,000円〜1万円程度 |
③ガラスコーティング | ・ガラス素材と保護被膜のレジンで、汚れの付着や紫外線による褪色を抑止する ・効果が高いが価格も高く、施工者の技術や専門の設備などが必要 ・一部の専門店では高額な価格設定をしているケースも稀にあり | 1〜5年 | ・1万円〜20万円程度 |
基本的に予算があれば、細かい傷を防ぎ・ボディカラーを保護してくれる性能の高いガラスコーティングを選ぶことをお勧めしています。
しかしながら、ガラスコーティングについても、選び方の注意点があり選び方を間違えると効果が出ないだけではなく十数万円の費用が無駄になるリスクもあります。
そのようなリスクを避けるために、正しいガラスコーティングの選び方について説明していきます。
(私はコーティング系の事業はやっていないので、ディーラーコーティングは肯定派だったりします)
ガラスコーティングの注意点
ひとことでガラスコーティングといっても、大きく『ガラス系コーティング』と『ガラスコーティング』の2種類に分類されます。それぞれについて解説していきます。
ガラス系コーティング
ガラス系コーティングのメリットは『樹脂系コーティングにガラス成分』を含ませることで、施工性がよくガラスコーティングの艶を比較的簡単に得ることができることです。そのため、ガソリンスタンドの洗車機などでも採用がされているコーティングです。
一方でガラス系コーティングのデメリットは、樹脂系コーティングにガラス素材を混ぜているため、耐久性としては1年程度しか持たないため定期的な施工が必要になることです。
ガラスコーティング
ガラスコーティングは『シリカ』、『シリキサン』などの強固なガラス素材をベースで構成されています。ガラスベースのためムラが出ないようにする技術と設備が必要ですが、うまく施工ができれば最上級の艶と保護性能を得ることができます。
一方でデメリットとしては、技術と設備に左右させるため、埃が入らずムラなく塗りやすい照明が完備された専用のブースなどがないところで施工すると価格の割に品質の低いコーティングとなってしまうことです。
さらに、ガラスコーティングのわかりにくさ故に、ディーラーコーティングの上位グレード程度の薬剤やディーラーの納車前工場以下の設備にも関わらず、ディーラーコーティングを批判して高額な自社サービスに誘導する業者もあるので注意が必要です。
(もちろん真面目にやっている専門店の方が多いのですが、そうでない業者も多々あります)
ガラスコーティングにおけるディーラー・ガソリンスタンド・専門店の選び方
ガラスコーティングの効果については、薬剤と施工技術・設備で決まりますがどのようにチェックをすれば不安な方も多いかと思います。その際には以下について確認をすると、あなたにとって最も良いディーラー・ガソリンスタンド・専門店を選ぶことができます。
チェックポイント①薬剤が『ガラス系』コーティングではないか?
ガラス系コーティングとガラスコーティングは似ていますが薬剤に大きな違いがあり、シリカなどのガラス素材を利用している方が圧倒的に耐久性や艶が良くなります。
そのため、店舗に依頼する前に『薬剤はガラス系コーティングではなく、シリカなどのガラスコーティング剤ですか?』と質問すると良いでしょう。
稀にセラミックやホーローという回答があるかもしれませんが、基本的にガラスコートのブランド名であるケースがほとんどですので、この質問をすることで品質の高いガラスコーティングか否かを判断することができます。
チェックポイント②コーティング用の機材とブースが確保されているか?
ガラスコーティングは塗布前の洗車と、塗布から乾燥するまでのブースが肝と言えます。コーティング前に汚れやウォータースポットなどがあると、コーティングをしてもそれがコーティングの裏側に残るため意味がありません。
また、専用のブースで影ができないように多面的に強い光を当てながら施工しないと、コーティングのムラが発生するリスクも高くなります。
ディーラーやガソリンスタンド、専門店などにガラスコーティングを依頼する前に『専用の洗車機材』や『コーティング用の埃が入らないブース』があるか確認をするようにしましょう。
一般的なブラシタイプの洗車機でコーティング専用ブースがないガソリンスタンドやディーラーなどの店舗は間違っても絶対に選ばないようにしましょう。(たまに個人の専門店でも機材とブースがないケースがあります)
チェックポイント③専門性のある人材がコーティングしてくれるか?
最後に重要なのは、ガラスコーティングを施工する人の専門性です。特に上質な仕上がりになるシリカ系のガラスコーティングは施工が難しいため、ある程度の技術や知識のある人でないと仕上がりが悪くなります。
キーパー技研のように技術認定制度があれば、ある程度の技術力は担保できますが一般的にコーティング技術を確かめることは難しいのが現状です。
そのため、少しでも技術力のある人にあたるために、以下のような対応をすることをお勧めします。
- 具体性のある悪い口コミがないかチェックをする(良い口コミは、業者の可能性があるため信頼しない)
- 施工担当者はどのような技術があるのか質問をする
- 『ムラ』があったら、磨き直し含めてやり直しをしてくれるかを事前に確認する
特に、2-3番目に記載の質問・確認をすると『細かいユーザー』と認識してもらえるので、ある程度まともな業者であれば下手な仕上がりで納品をすることは確実に避けるでしょう。
コーティングで大切なのは、この人の車はきちんと仕上げないといけないと理解してもらうことですので、こだわりがあることをきちんとPRして、約束内容を発注書などにメモしてもらうことをお勧めします。
車のコーティングはディーラーじゃダメなの?
車のコーティングの種類や選び方について解説してきましたが、やはり最も大切なことはガラスコーティングの良い薬剤・設備/技術があることです。
インターネット上で検索すると、ディーラーコーティングはぼったくり、品質が良くない、下請けに投げているという悪い内容を見ることが多いと思います。しかしながら一概にディーラーのコーティングが悪いものではありません。
(特に、専門店やガソリンスタンドは自社でコーティングしてもらえると儲かるので、ディーラーに対しては否定的なスタンスが多いかと思います)
ただし、結論から言うと『納車前の点検施設』が整っているディーラーであればガラスコーティングを依頼しても全く問題ありませんし、安定した良い仕上がりが期待できます。
トヨタ系など新車ディーラーでは納車を効率化するために、工場で生産された車を『地域の納車前点検施設』に一時的に集めてその場所でディーラーオプションの設定やコーティングを実施しているケースが多くなっています。
トヨタメトロジック株式会社から引用
上記のようにトヨタモビリティ東京などでは、トヨタメトロジックと呼ばれる納車前の点検施設でコーティングを実施しているケースが多いため、専用のコーティングエリアで技術のある担当者がガラスコーティングを施工してくれます。
納車前の点検施設でガラスコーティングしてくれるディーラーであれば、ガラスコーティングを発注することで本体の値引きをしてもらいやすくなったり、納車後すぐにお出かけに行けたりするメリットがあるので、積極的にディーラーコーティングを選ぶと良いでしょう。
ただし、メーカーや地場のディーラー経営会社によっては、設備の整っていないそれぞれのディーラーでコーティングしている可能性がありますので注意が必要です。
ディーラーでボディコーティングを発注する前に、『納車前のディーラーオプションは、専用施設でやっていますか?』と質問をすることをお勧めします。
タイプ別、おすすめのコーティングとは?
車といっても購入する意図はさまざまで、下駄がわりの車が欲しい人もいれば、所有欲を満たしてくれる愛車が欲しい人もいると思います。そのため、最後にタイプ別におすすめのコーティング・店舗の選び方を解説していきます。こす
道具として車を使い倒したい方
ディーラー・ガソリンスタンドなどでガラスコーティングを実施することをお勧めします。
ある程度のガラスコーティングの経年劣化が気にならないのであれば、最初にコーティングをしてあとは水洗いや雨できれいにするという選択肢が一番楽に維持できる方法です。
※最近の車も塗装が良くなってきていますので、車の外観も気にせず、廃車まで乗り潰したいというケースであればコーティングをせずにコスト削減すると言う選択肢もおすすめです。
ピカピカの車に乗りたいが、洗車を自分でやりたくない方
きれいな車で維持したいが、洗車機すら自分でやりたくないという方はディーラーでのポリマーコーティングまたはガラスコーティングをお勧めします。
ポリマーコーティングの場合は、コーティングの効果が最大3ヶ月程度となりますがコストが安いため、3ヶ月ごとにディーラーで洗車してもらいコーティングをすることで手間をかけずにきれいな状態を保つことができます。
ガラスコーティングの場合は、1年〜5年保証タイプを選び、1年ごとにメンテナンスをしてもらうことで毎年きれいな車を維持することができます。
なお、コーティングのメンテナンスの時期についてはあえて車検や点検からずらすことをお勧めします。車検や点検などの際に洗車をしてくれるディーラーが多いため、時期をずらすことで同じコストで年間2回ディーラーに洗車してもらえるためコストパフォーマンスが良くなります。
ピカピカの車で、洗車も自分でやりたい方
ディーラーまたは専門店で10-15万円程度のガラスコーティングを選ぶことをお勧めします。施工店舗を選ぶ際には前述の『ガラスコーティングにおけるディーラー・ガソリンスタンド・専門店の選び方』を参考にしてみてください。
個人的には施工施設・担当者がいるディーラーコーティングであれば、メンテナンスキットももらえるので自分で洗車したい方にはおすすめです。
まとめ:ディーラーコーティングのメリットは大きい
大切な愛車を綺麗な状態に保つために、コーティングの種類から施工場所の選び方について解説してきました。
インターネット上にはディーラーコーティングが一律品質が低いという内容が転がっていますが、必ずしもそうとは限りません。
事前に納車前の点検施設でコーティングしてくれるか確認をすることで、品質の高いディーラーコーティングか否かを判断することができます。
ディーラーコーティングを申し込むと新車購入時の割引額が多くなったりなど金銭的なメリットもありますので、この記事で紹介した良し悪しの見極め方を参考に、賢くディーラーコーティングを選ぶことをおすすめします。